政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「片倉さん、です。結婚するのですよね?いずれは浅緋さんも片倉さんになると思うのですが」

 確かにそうだけれど。
 分かってはいた。
 頭の中で分かってはいたけれど、なかなか実感が湧かないのだ。

 しかし、片倉の言う通りではあった。
「確かに、そうですね」

「知っていますよね?僕の名前」
 それはもちろんだ。
 こくん、と浅緋は頷く。

「呼んでみてくれませんか?」
 改めて言われると、なんだかとても恥ずかしいような気がするのだけれど、確かにこのまま苗字で呼び続けるわけにはいかない。

「慎也、さん……」
「はい」
 それだけなのに、浅緋は顔がとても熱くなってしまった。

 また、こんな赤くなってしまって本当に恥ずかしい。

「浅緋さん、もう一度呼んで?」
「え?」

「すごく嬉しいんですよ。名前を呼ばれて、浅緋さんにそう呼んで欲しかったんだなって気づきました。思ったよりも嬉しかったので、もう一度呼んでほしい」
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