政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 段々話しながら、浅緋は俯いてしまった。

 確かに会社で仕事はしているけれど、それもあまり役に立っているとは思えないし、今自宅にいてもやはり片倉の役に立っているとは思えなくて、こんなことでいいのだろうか、と思えてきてしまったのだ。

「役に立ちたいですか?」
「はい!」
 返事をして顔を上げると、いつものように片倉が優しく笑っている。

 そして、浅緋の手を取り、きゅっと握った。
 浅緋はとてもドキドキしてきてしまう。

 片倉の手は浅緋の手よりずっと大きくて、きゅっと握られたら、全部包み込まれてしまうみたいで、それが照れくさいのだけれど、嬉しいから。

「浅緋さんがいてくださるだけで、僕はいいんですけど。今日は名前で呼んでくださいましたし、こうして、手も繋いでしまいましたね。それで充分ですけど、もっと?」

「はい!」
「じゃあ……」

 そう言って繋いだままの手を引かれて、浅緋は緩く片倉にもたれかかってしまう。
 浅緋の手を握っていた手はそのまま、浅緋の背中に回された。

 抱きしめられている‼︎

 こんな風に片倉と密着することは初めてで、ただ身体を固くすることしかできない浅緋だ。
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