政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 その様子を見つめる目があることに、浅緋は気付いていなかった。

 仕事が終わり同僚である池田に案内されたのは、小洒落たイタリアンの店だったのだが、その席に男性がいることは浅緋は想像していなかった。

 彼らは総務部にいる池田とはとても仲の良い様子だ。
「園村さん、紹介しますね。私の同期なんです」

「初めまして! 岡本です。池田にはいつも書類が間違ってるって叱られてばっかりいます」
 岡本は元気で爽やかな好青年だった。

 他にももう一人、川野と名乗った男性がいた。
 部署が違うようだけれど、同じ会社であるとのことだ。

「園村さん、社長についているのを遠くから見たことはありますけど、近くで見てもすごく可愛い方ですね」
 浅緋の向かいに座った岡本はそう言って笑顔を向けてくれる。

 深い意味はないのだろうけれど、それでも浅緋は人見知りするせいか、男性が怖くて苦手だ。

 女性ばかりに囲まれていたせいか、その低い声や高い背丈にどうしても威圧感のようなものを感じてしまって苦手だし、電車などに乗るとじろじろと不躾に見られるのも怖い。
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