政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
浅緋が庭で転倒して泣いた時、彼は大きな声で吠えてそれで自宅の大人たちは気付いてくれた。
それなのに大きな声で吠えたから、浅緋が泣いてしまったのだと誤解されて、叱られているのを見たときのようだ。
あの時もあの黒い大きな犬は『ごめんなさい』という顔をして、尻尾を垂れていた。いつもはきりりとして祖父のそばに侍っているのに、その申し訳なさそうな顔に浅緋の方が申し訳のない気持ちになったものだった。
その後わんちゃんは悪くないという説明を一生懸命にして、分かってもらった浅緋は犬と、とても仲良くなった。
ふと、その時のことを思い出した浅緋はふわ……と槙野の頭を撫でた。
「おい……どういうつもりだ」
唸っているわ。
こうなるともう、犬にしか見えない。
くすくすと笑う浅緋に槙野はまた大きくため息をついて、浅緋の顔の方に手を伸ばす。
その手が浅緋の後ろから伸びてきた手に抑えられた。
「そんなしつけの悪い犬は飼った覚えがないがな」
その人のそんな地を這うような低い声は、浅緋は聞いたことがなかった。
それなのに大きな声で吠えたから、浅緋が泣いてしまったのだと誤解されて、叱られているのを見たときのようだ。
あの時もあの黒い大きな犬は『ごめんなさい』という顔をして、尻尾を垂れていた。いつもはきりりとして祖父のそばに侍っているのに、その申し訳なさそうな顔に浅緋の方が申し訳のない気持ちになったものだった。
その後わんちゃんは悪くないという説明を一生懸命にして、分かってもらった浅緋は犬と、とても仲良くなった。
ふと、その時のことを思い出した浅緋はふわ……と槙野の頭を撫でた。
「おい……どういうつもりだ」
唸っているわ。
こうなるともう、犬にしか見えない。
くすくすと笑う浅緋に槙野はまた大きくため息をついて、浅緋の顔の方に手を伸ばす。
その手が浅緋の後ろから伸びてきた手に抑えられた。
「そんなしつけの悪い犬は飼った覚えがないがな」
その人のそんな地を這うような低い声は、浅緋は聞いたことがなかった。