政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 今まで、散々園村に助けてもらった。

 だから、会社の事をよろしく頼むと言われた時も、二つ返事とはいかなかったけれども、検討した結果引受けることにしたのは、ひとえに今までの恩があったからである。

 それに今の片倉ならできなくはない、という判断をしたからだ。
 会社の経営は義理だけではできない。それでもやっぱり世話になった人に何か返したいとは思った。

 奇しくも昔、園村が言っていた通りになったわけである。

「託すってどういう事なんです?彼女は会社のようにはいかないでしょう?」
「君には今そういう相手はいるのか?」

「今はいませんね」
「だろうな。でなかったらこんな死に損ないのところに足繁く通うわけもないからな」
 園村の毒舌は昔からで、片倉はそれにも慣れている。

「箱入りで育てすぎてて……素直でいい子なんだが、純粋すぎて心配なんだ」
 園村の、それは経営者とは違う父親の顔だった。

「人見知りもあって、積極的ではないけれども、落ち着いて物事をしっかり見ることのできる子だと思う。思慮深い子なんだ。先を見通す冷静な君とは似合いなんじゃないかと思ったんだが」
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