政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
6. 一瞬の邂逅
「僕の方はそれでお話を進めてもらって構わないですが……」
「なぜ迷う?」

「浅緋さん自身のお気持ちです」
「浅緋の方はそんなこと考えていないだろう。それに君のことを嫌がるとも思えないが」

 好み、という点で言えば園村も浅緋は男臭い男性よりも、片倉のような優し気な男性の方がいいような気がしていた。

 押しが強い男性だと、浅緋はおそらく委縮してしまうだろう。
 園村は改めて片倉を見る。

 優し気な雰囲気だけれど、芯があり、一度引受けたことは彼の責任下に置いてやり遂げることは長い付き合いの中で分かっている。

 大事な掌中の珠を託すのならば、この人物しかいないと思うのだ。

「まあ、よく考えてみてほしい。ただし、時間はそんなにないからな」

 そう言われ、片倉は病室を後にした。
 会社の事は何とかなると判断できた。
 しかし、人……となるとそうもいかない。

──どうしたものか……。
 片倉が考えながら廊下を歩いていたときである。

 正面から歩いてきた女性に、一瞬で目を奪われた。
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