政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 そうして奥さんはふふ……っと笑い声を漏らした。
「私はあなたが浅緋は無理だと思うんじゃないか、って考えていたんですけど」

「僕が……?」
 片倉は片倉自身が浅緋のことを無理だと思うことなんて、あり得なかった。
「そんなことはない、と思いますが」

「どうして? 普通ならそう思うでしょう? 彼女の父親からの無理な遺言で強引に押し付けられたようなものよ? しかもあなたはお金持ちで、とても素敵なお顔立ちをされてる。全てを持っている方なのだから、とても女性におモテになると思うのよ?」


「確かにきっかけは園村さんに言われたことですが、僕自身は望んでもいなかったような光栄です。僕は最初から浅緋さんに惹かれています。だからこそ、無理強いはしたくない。今回のお話をお断りされたとしても、僕は責任を持ってお2人をお守りします」

「なるほどね……」
奥さんは上品な仕草でお茶を飲んだ。

 とても柔らかい雰囲気の人なのに、一本芯の通ったところを感じる。
 園村もそういうところに惹かれたのかもしれない、と思うような人だった。

「私は園村の見る目を疑ったことはありません。あの人、見る目だけは間違いない人だったわ。それはワンマンなところもありましたけれど、男性なんて大なり小なりそういうものです。特に彼は一国一城の主でもあったのですもの。なおさらです」
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