政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 片倉は頷く。

 すると奥さんはころころと笑い出した。
「それにしても、確かに園村の言う通りだわ。あの子、こうでもしなきゃ一生結婚なんてしないもの。そうこうしているうちに流されてどなたかのところにお嫁に行くのは明白ですわ」

 そうして片倉の方をまっすぐ向いた。
「あなたもよ? 片倉さん。素敵な方なのに今までご縁がなかったのはそういうことなのではなくて?」
 片倉は手で口元を覆って大きくため息をついた。

 それを見て笑っている奥さんは確かに園村の伴侶なのだと思う。
「おっしゃる通りです」

「お幸せになりなさい。きっと、浅緋も大事にしていただけるでしょう」
 そうして奥さんは席を立った。
 片倉も時間を察して、席を立つ。

 玄関には綺麗に揃えられた靴と、先日のお手伝いさんがいた。
「片倉さん……」

 片倉が靴を履いて、帰ろうかとしていた時に奥さんに声をかけられる。

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