政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 浅緋には苦労をさせたくはないし、そんなことをしなくても十分に養える自信はある。

 それに浅緋を近くで見ると、側において誰とも接することをしたくなかった、という園村の気持ちが充分以上に理解できてしまったから。

 本当ならば誰の目にも触れさせないで、側においておきたい。

 彼女には好きなことをして過ごしてほしかった。

 それでも仕事は続けたいという浅緋に、片倉は一瞬考える。

 今後、園村ホールディングスの担当を任せようと思っているのは、槙野だ。

 槙野の付き合う女性のタイプは華やかで浅緋とは真逆のタイプだ。それに槙野は仕事と私情を混同するタイプでもない。
  
「来週からはうちのものが園村ホールディングスに伺って仕事をする予定なのですが、その人についていただきましょうか」

「いいですか?」
「あなたがそうしたいのなら。それにそちらに伺うのは信頼できる者ですから」
「はい」

 こうやって、一つ一つの事を2人で決めてゆくのも悪くないな、と片倉は感じていた。
 普段なら面倒にも思うようなことでも、浅緋とならそうは思わないのだ。
< 93 / 263 >

この作品をシェア

pagetop