政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 その答えを聞いて槙野は安心した。
「じゃあ、その余命って何なんだ?」
「うん、それについて話したいと思ったんだ」

 そんな話をしているうちに料亭に到着したので、2人で車を降りる。

 今日は運転手付きなので、最初からお勧めのアルコールを口にして、手の込んだ食事を頂いた。

 料亭の食事というのは、若干サッパリしすぎな感もあるが、以前と比べると油分の多いものが食べられなくなったのは歳のせいだろうか……と少し感じてしまう槙野だ。

「最近はどうだ?」
 片倉が徳利を持ち上げる。 槙野はお猪口を差し出した。

 上司ではあるけれど、友人でもある2人の関係はこんな時は友人としての顔の方がお互い気楽だったりする。

「んー、久々に本社へ帰ってきて、いろんな部署を覗いてるよ。下の奴らもアドバイスほしいとか声掛けに来るし、まあ、ぼちぼちかな。そろそろ新しい案件があれば参加したいかなとは思うけど」

「槙野向けの案件がある。お前がやってくれるなら助かる」
 それを聞いて、槙野はこれが話したかったんだなと察した。

「さっきの余命の件な。園村社長だ」
「え……」
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