僕惚れ③『家族が増えました』
「直、人……なんで……」
葵咲に手を差し伸べてくれている青年に向かって、逸樹が眉根を寄せて「……バイトは?」と問いかける。
逸樹から直人と呼ばれた青年は、葵咲の眼前でヘルメットを脱ぐと、あご紐を引っ掛けるようにして手に持った。下から見上げた直人は、彼の横に立つ逸樹よりはほんの少し小柄な印象だったけれど、一五〇センチ半ばの葵咲から見れば十分長身な部類に入る。
色素の少し薄い暗茶の髪の毛がふわふわで、逸樹と違って険のなさそうな印象の、優しそうな青年だな、と思った。
間違っても、直人は逸樹のように強引に葵咲をどこかへ連れて行こうとはしないだろう。
そのイメージに違わず、葵咲に「怪我はないですか?」と心底心配そうな顔をして声を掛けかけてきた直人は、けれどもその一方で逸樹を完全に無視していて。
「……あ、だ、大丈夫です」
直人に助けられながら立ち上がった葵咲は、期せずして逸樹と直人の間に立ってしまった。二人に挟まれて、何だかとっても落ち着かない。
葵咲が、あまりにピリピリした空気――主に発生源は逸樹だけれど――に、
(早く部屋に戻ってレポートしたいよぅ……)
とか思ってしまったのも仕方ないだろう。
葵咲に手を差し伸べてくれている青年に向かって、逸樹が眉根を寄せて「……バイトは?」と問いかける。
逸樹から直人と呼ばれた青年は、葵咲の眼前でヘルメットを脱ぐと、あご紐を引っ掛けるようにして手に持った。下から見上げた直人は、彼の横に立つ逸樹よりはほんの少し小柄な印象だったけれど、一五〇センチ半ばの葵咲から見れば十分長身な部類に入る。
色素の少し薄い暗茶の髪の毛がふわふわで、逸樹と違って険のなさそうな印象の、優しそうな青年だな、と思った。
間違っても、直人は逸樹のように強引に葵咲をどこかへ連れて行こうとはしないだろう。
そのイメージに違わず、葵咲に「怪我はないですか?」と心底心配そうな顔をして声を掛けかけてきた直人は、けれどもその一方で逸樹を完全に無視していて。
「……あ、だ、大丈夫です」
直人に助けられながら立ち上がった葵咲は、期せずして逸樹と直人の間に立ってしまった。二人に挟まれて、何だかとっても落ち着かない。
葵咲が、あまりにピリピリした空気――主に発生源は逸樹だけれど――に、
(早く部屋に戻ってレポートしたいよぅ……)
とか思ってしまったのも仕方ないだろう。