僕惚れ③『家族が増えました』
 聞けば、どうやら直人(なおひと)のバイト先に捨てられていた子猫ということだった。

「ちょっと先の、()()ストアってコンビニ、ご存知ないですか? 俺、そこでバイトしてるんですけど……外のゴミ箱前にコイツが箱詰めにされて捨てられてるのを見つけちゃって」

 バイト中ではあるし、そもそも自分の住んでいるアパートはペット不可だ。思わず拾い上げてしまったものの、どうしよう?と困っていたところへ、たまたま店に寄った逸樹(いつき)が連れ帰ってくれたのだと言う。

「逸樹さんち――、あ、この隣なんですけど……は、まぁペット可だから大丈夫かって、そのまま預けちゃったんですけど、……よく考えたら」

 そこまで告げて、直人は逸樹を振り返った。
「うちは文鳥を飼ってる。猫はさすがに無理だ」

 だったらなんで引き受けた?と思った理人(りひと)だったけれど、理人も葵咲(きさき)が困っていたら……と想像したら、恐らく後先考えず、「僕に任せろ!」と言ってしまうな、と思い至って苦笑する。

 つまりは――。

(惚れた弱みというやつですね、山端(やまは)さん)

 思わず逸樹にほんの少し親近感の湧いてしまった理人である。
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