僕惚れ③『家族が増えました』
「経緯は分かりました。幸いうちは何も飼っていませんし、僕も葵咲も猫は嫌いじゃありません」
言いながら、「むしろ大好きです!」と子猫の寝顔を見つめてやや興奮気味に心の中で付け加えてから、理人は二人を見据えた。
「なので……この子のことは僕らに任せていただけますか?」
言うと、直人が心底ホッとしたような顔になった。
「ありがとうございます。安心しました。あの――」
そこでひょこっと顔を覗けた葵咲にむかって、直人はペコリと頭を下げる。
「丸山さん、話、済んだんで俺たち帰ります。猫のこと、よろしくお願いします」
そう言ってから「ほら、逸樹さんも」と逸樹にも頭を下げさせると、「じゃあ」と踵を返した。
扉が閉まる寸前、逸樹がドアを押さえてから、葵咲に向かってボソリと「腕、悪かったな」と言った。
葵咲は、逸樹からの思わぬ謝罪に瞳を見開いて固まってしまった。
二人が帰ってから、理人はずっと抱いたままだった子猫をリビングの箱の中にそっと戻すと、台所の葵咲へ声をかける。
「葵咲、セレの名前の由来、分かったよ」
彼女に歩み寄りながら言って、意地悪く微笑む。
そうして次の瞬間、真顔になると、
「ところで――さっきの山端さんの謝罪、なに?」
葵咲の手首を捕まえて、そう問いかけた。
言いながら、「むしろ大好きです!」と子猫の寝顔を見つめてやや興奮気味に心の中で付け加えてから、理人は二人を見据えた。
「なので……この子のことは僕らに任せていただけますか?」
言うと、直人が心底ホッとしたような顔になった。
「ありがとうございます。安心しました。あの――」
そこでひょこっと顔を覗けた葵咲にむかって、直人はペコリと頭を下げる。
「丸山さん、話、済んだんで俺たち帰ります。猫のこと、よろしくお願いします」
そう言ってから「ほら、逸樹さんも」と逸樹にも頭を下げさせると、「じゃあ」と踵を返した。
扉が閉まる寸前、逸樹がドアを押さえてから、葵咲に向かってボソリと「腕、悪かったな」と言った。
葵咲は、逸樹からの思わぬ謝罪に瞳を見開いて固まってしまった。
二人が帰ってから、理人はずっと抱いたままだった子猫をリビングの箱の中にそっと戻すと、台所の葵咲へ声をかける。
「葵咲、セレの名前の由来、分かったよ」
彼女に歩み寄りながら言って、意地悪く微笑む。
そうして次の瞬間、真顔になると、
「ところで――さっきの山端さんの謝罪、なに?」
葵咲の手首を捕まえて、そう問いかけた。