初恋グラフィティ
02 交換条件
「実家暮らしのユキちゃんが急にひとり暮らしを始めるなんて、一体どういう心境の変化だと思う?」
昼休みの音楽室。
私は同じクラスのキーコと並んで、机の上でお弁当を広げていた。
「そうだねえ…」
キーコは高校に入ってからできた友達だ。
今は同じ合唱部に所属している。
私は自分から人の輪に入っていくことができないタイプの人間だけど、
彼女はそんな私にも声をかけ、部活動にまで誘ってくれたありがたい存在だった。
「私が思うに、たぶん女と一緒に暮らすんじゃないかな、ユキちゃん」
「え…?」
「まあ、同棲まではいかないとしても、ひとり暮らしの方が女を連れ込むのに都合いいよね」
キーコはクールで、いつも物事をはっきり言う。
私とは正反対のキャラだけど、私が勝手に心を開いて、飼い犬のように彼女の後をついて回っていた。