初恋グラフィティ
みぽりんは私達を見ながら笑っていたけど、しばらくして何かを思い出したように言った。
「ああ、これで志保にも定期演奏会で花束をくれる人が確保できたわね」
「え…?」
「ほら、合唱部は毎年3月に定期演奏会をしてるでしょ…?彼氏がいる子はそこで彼から花束をもらうのが恒例になってるの」
「へー。そうなんですか」
「だからキーコも早くいい彼を見つけなさいね」
みぽりんの言葉に、キーコは口をとがらせた。
「先生、それは余計なお世話ですよ」
「あら、強がっちゃって!」
みぽりんが笑うと、
「別に強がってなんかいませんよ…。私には男の他に情熱を注いでるものがありますからね」
キーコはグランドピアノの前に移動し、志保のお祝いに1曲弾きますと言って、リストの『愛の夢』を弾き出した。
キーコのピアノはやっぱり上手かった。
彼女が奏でる心地よいメロディをBGMに、私はユキちゃんと定期演奏会のことを考えていた。
定期演奏会か…。
ユキちゃん、花束持ってきてくれるかな…?