初恋グラフィティ
私は大きくため息をついた。
「いいなー、私もみぽりんくらい美人だったら、自信持ってユキちゃんに告れるのにな…」
みぽりんは肩まで伸びた髪をゆるく巻いていて、いつもお洒落な格好をしている。
化粧も上手くて、まさに大人の女性という感じだ。
「不細工で残念だったね…。ま、恨むんなら親を恨むことだね」
「は…?何それ…?ちょっとひどくない…?!」
私がふくれると、
「ほら、早く食べないと昼休みが終わっちゃうよ」
キーコはグランドピアノの前に座り、名曲『エリーゼのために』を弾き出した。
幼い頃からピアノを習っているというキーコの腕はなかなかのものだ。
…この曲って、確かベートーベンが好きだったのに結ばれなかった人のために書いた曲じゃなかったっけ。
まさに私の心境にぴったりな曲だよと思いつつ、私は弁当箱のふたを閉じた。