初恋グラフィティ
「実穗と結婚したときからそうだったんだけど、俺、ホントはずっと早く子どもが欲しかったんだ…」
恭平さんは再び真剣な表情を見せて言った。
「だから志保ちゃんさえよかったら、ぜひ俺の子どもを産んでほしい…」
「え…っ」
「マジでちょっと考えといてくれないかな…?」
「……」
私は彼から目をそらした。
無理…。
そんなの、無理にきまってるよ…。
そんな言葉が喉まで出かかったけど、私がそれを言う前に
「とりあえず今日は帰るけど、あんたちゃんと中絶費用工面しといてよ…!」
そう言ってみぽりんが私を外へ連れ出したので、
私は自分の気持ちを伝えることなく恭平さんの部屋を後にした。
恭平さんはアパートの外まで私達を追いかけて来て、「志保ちゃん、俺本気だから…!」と叫んでいたけど、
その言葉は胸に重くのしかかって、私を苦しめるだけだった。