初恋グラフィティ
恭平さんが勤める美容院に着くと、時刻はとっくに6時半を回っていた。
秋は日が暮れるのが早くて、辺りはもう真っ暗だった。
髪を伸ばしている私だけど、入店する以上カットしてもらわなきゃいけないだろうから、
仕方ない、毛先だけそろえてもらうかと思いながらドアを開けた。
「いらっしゃいませー」
中に入ると、若い女性従業員が出て来て言った。
「申し訳ございません…。当店は7時閉店のため、受付は6時半までなんです…」
「え…?」
「すみませんが、またのご来店をお願いできますか…?」
確かに店内を見回してもカット客がひとりいるだけで、
ほとんどの従業員が床を掃いたり、片付け物をしているようだった。
「そうですか…」
肩の力が抜けてしまった。
「それじゃまた来ます…」
そう言って女性従業員に頭を下げたときだった。