初恋グラフィティ
「あれー、志保ちゃんじゃない!来てくれたんだ?!」
OL風の女性をカットしていた男性美容師がこちらを向いて叫んだ。
「え…」
私はあまり視力のよくない目を凝らして、その声の主を見た。
…茶髪パーマに見覚えがあった。
今日は白くシンプルなシャツを着ていたけれど、
間違いなくユキちゃんに紹介された藤沢恭平さんだと思った。
「あの…、私のこと覚えてるんですか…?」
「もちろんだよ。幸男の隣の家の子でしょ…?」
うそ…。
私のこと、ちゃんと覚えててくれたなんて…。
「すみません、受付時間外に来てしまって…」
そう謝ると、さっきの女性従業員が彼に駆け寄り、私の話をしてくれた。
すると恭平さんはにこっと微笑んだ。
「何だ、こちらのお客様の後でよければ、俺カットしてあげるよ…。ちょっと遅くなるかもしれないけどいい…?」
「あ…、はい…。ぜひお願いします…!」