初恋グラフィティ
恭平さんとの接触に成功した私は、母に「美容院に来てるんだけど順番待ちで少し遅くなるから」と電話し、
ソファに腰掛けて彼の手が空くのを待たせてもらった。
恭平さんは先客のブローを終え、他の従業員に「後は俺がやっておくから」と帰ってもらうと、
私に「お腹すいてない?コーヒーとお菓子でも出そうか?」と言ってくれた。
「あ…、私は大丈夫です…」
私がそう言うと、
「そう…?じゃあ俺だけちょっと休憩させて。ごめんね」
恭平さんはズボンのポケットからタバコとライターを取り出し、その1本に火をつけた。
「学校帰り?」
「あ…、はい…」
「そう…。よく来てくれたね」
立ち上る煙の向こうで恭平さんはにこやかに笑った。
…こんなふうに雑談してるってことは、今ちょっと話しても大丈夫かな…?
そう思った私は、ここぞとばかりに口を開いていた。