初恋グラフィティ
お隣に住むユキちゃんは、私より10歳年上の社会人。
市役所に勤めている彼は、こうして毎朝出勤前に私を学校まで送ってってくれている。
単に私の通う高校が市役所へ行く途中にあるからなんだろうけど、
この行為は私が高校に入学したときに始まり、もう半年以上続いていた。
ユキちゃんの車は結構新しく、外も中も常にきれいにしてあってちょっと緊張する。
芳香剤のいい匂いがする車内は、私達が唯一ふたりきりになれる天国のような場所だ。
この空間で私達の会話が弾むことはめったにない。
大抵ラジオから流れてくるおじさんの声に、一緒に耳を傾けているだけ。
残念なことに私の通う高校は車だと5分くらいで着いてしまうので、
一緒にいられる時間はあっという間に過ぎてしまう。
それでも私にとって、この5分間は至福のときだ。