初恋グラフィティ
大きな鏡の前に腰掛けると、首にタオルを巻かれ、その上にケープをかけられ、適当な位置まで椅子を上げられた。
「どれくらい切る?」
鏡の中の恭平さんが私に問いかけた。
「あ…、毛先をそろえてもらう程度でいいんですけど…」
そう答えると、恭平さんは私の髪の毛をつかんで言った。
「えー?志保ちゃんなら短くしてもかわいいと思うけど…。それに幸男は短い方が好きなんじゃないかな…?短く切ればロングより安く上がるしさ」
ユキちゃんの名前を聞いた瞬間、ちょっと心が動いたけど、
結局私は「いえ、ホントそろえてもらうだけで結構です…。髪の毛も伸ばしたいんで…」
と言った。
「了解」
恭平さんは霧吹きで私の髪を湿らせた後、左手でつかんだ髪に右手でゆっくりハサミを入れ、黙々と手を動かし続けた。