初恋グラフィティ
「あ…、えと…」
彼を引きとめてみたものの、いざとなると言葉が出ない。
それでも口が適当な言葉を探した。
「あの…、クリスマス…、結局一緒に過ごせなくてごめんね…」
そんなふうに切り出すと、意外にもユキちゃんは笑顔を見せてくれた。
「いや…、いいよ…、別に…。今日は久々に家族と過ごせたしね…」
「そう…?」
「うん…。志保は恭平の家に行ってたの…?」
「あ…、うん…。実家の方にお邪魔させてもらってたんだ…」
「じゃあ、あいつのおふくろさんにも会ったんだ…?」
「うん…」
「そっか…」
ユキちゃんは目を細めて微笑んだ。
「あいつの母さん、いいお母さんだよな…。いつもやさしくてさ…」
「確かにそんな感じだね…」
「俺も恭平の母さん、昔から大好きなんだよ」
「へー…」
「お母さん、元気だった?」
「あ…、うん…、まあ…」
「…そっか。でももう長くないんだってな…」
「え…?」
“でももう長くないんだってな…”。
…その言葉ですぐに察しがついた。
ユキちゃん、
恭平さんのお母さんがガンだってこと、知ってるんだ…。