初恋グラフィティ

「あのね…」


〈うん〉


「恭平さんのお母さんがね…」


〈うん〉


「今日…、亡くなっちゃったの…」


〈…え?〉




ユキちゃんが驚いたような声を出した。




「それで私、もうどうしたらいいかわかんなくて…。今もお母さんのこと思い出して、すごい落ち込んでたんだ…」


〈落ち込んでた…?何でまた…〉




私はユキちゃんに胸の中の想いをぶつけた。




「あのね…、恭平さんのお母さん、自分がお嫁に来るときに着た衣裳を私にも着せたいって言ってくれてたの…。でも結婚式は3月に挙げることになってたから、結局私の花嫁姿を見せてあげることができなくて…。それで私、何かお母さんに申し訳ないことしたなって思ったら、もうやるせなくて…」


〈何…、そんなことがあったんだ…?〉


「うん…」




ユキちゃんに話を聞いてもらった安堵感からか、私の目からは更に涙がこぼれていた。




「今更後悔しても遅いけど…、私…、ホントお母さんに何もしてあげられなかったんだ…」


〈志保…?〉


「何も…、何も…っ…」


〈志保…〉


「…っ」



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