初恋グラフィティ
気がつけば、車は曲がりくねった山道を走っていて、
私達は空にとても近いところへ来ていた。
雑木林を抜け、月明かりがさす場所で車を停めると、ユキちゃんはエンジンを切って言った。
「ちょっと寒いけど降りられる?」
「え…?」
「少しだけ一緒に星を見よう…?」
ユキちゃんがシートベルトを外して外へ出てしまったので、私も同じく車を降りた。
辺りにはいくらか積雪があって、確かに寒かった。
吐く息も白い。
街灯がないせいか、遠くまで澄みきった夜空には、冬の星座がよく見えた。
「わ…、すごーい…」
「ね…?星がよく見えるでしょ…?」
「うん…。きれー」
しばらくすると、ユキちゃんが明るく輝く星を指差して言った。
「あの星さ…」
「ん…?」
「恭平の、お母さんの星だよ」
「え…?」
「お母さん、亡くなってもこうして俺達のこと、ちゃんと空から見てるんだぜ…?」
ユキちゃんが真面目な顔をして言った。
「だから志保がそんな暗い顔してると、お母さんだってきっと悲しむぞ…?」