初恋グラフィティ

「ごめんね、何か余計な心配させちゃったね…」




私が謝ると、ユキちゃんは首を横に振って言った。




「志保」


「ん…?」


「長く生きてるとさ…、自分の力じゃどうにもならないことっていろいろあるんだよ…」


「う…ん」


「志保は電話で、お母さんに何もしてあげられなかったって嘆いてたけど、お前はこれからお母さんの孫を産むんだろ…?」


「うん…」


「ならさ、それだけでもう十分なんじゃない…?」


「え…?」


「志保の気持ちは恭平のお母さんだってちゃんとわかってくれてるはずだよ…。だからそんなふうに後悔したり、自分のこと責めたりしない方がいいよ…?」




ユキちゃんが私の頭をポンとたたいた。




「な…、落ち込むのはこれでもう終わりにしよ…?」


「ユキちゃ…」




ユキちゃんのやさしさに私はまた泣きそうになったけど、


さっきまで流れていた悲しみの涙は、とっくに乾いてしまったようだった。




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