初恋グラフィティ
私は目の前の扉を軽くノックした。
…が、
どういうわけか返事はなかった。
どうしたんだろ…?
おかしいなと思いながら、そっとドアを開けてみた。
控室の中を覗くと、
新郎は黒い羽織にグレーの袴を身に着け、こっちに背を向ける格好で小さな椅子に座っていた。
和装に合わせて染め直したのか、今日は髪も黒く、整髪料できれいに整えられていた。
「おはようございます…。着替え、終わりました…。そろそろ大拝殿の方に行きますか…?」
私の言葉に、彼がこっちを振り向いたのだけど…、
そのとたん、
私は思わず息を飲んだ。