初恋グラフィティ
恭平さんはバッグの中から小さく折りたたんだ紙を取り出すと、それを私に握らせた。
「志保ちゃん…、君は幸男と結婚しろよ」
「え…?」
渡された用紙を開くと、それは婚姻届だった。
既にユキちゃんの署名捺印がされている。
「えっ…、これって…」
「大丈夫。幸男とはもう細かい話はつけてあるから…。な、幸男…?」
恭平さんがユキちゃんに目配せすると、ユキちゃんがゆっくりうなずいた。
「でも私、今日は恭平さんと結婚するつもりでここに来たんだけど…」
混乱している私をよそに、恭平さんはそこにあったソファにどすっと腰を掛けて言った。
「志保ちゃんさ…、こないだ俺に、初恋は実らないものだって言っただろ…?」
「え…?」