初恋グラフィティ

私が口を閉じると、


立ち上る煙の向こうで恭平さんはまたしても驚きの発言をした。




「志保ちゃんの初恋の人は幸男だったかもしれない…。けど、俺にとっての初恋は、今思えば志保ちゃんだったんだよね…」


「え…?」


「俺、結婚してたこともあるし、いい年して何言ってんのって笑われるかもしれないけど、こんなふうに心から幸せになってほしいと思えるほど好きになれた人は、ホント志保ちゃんが初めてでさ…。志保ちゃんが俺の子どもを宿してくれたことも大きいかもしれないけど、人はこんなに誰かを好きになることができるんだって、自分でも驚いてるくらい…。ま…、俺の初恋は残念ながら実らなかったけどね…」




恭平さんはテーブルの上の灰皿にタバコをのせると、再びバッグの中に手を突っ込んだ。



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