初恋グラフィティ
私が恭平さんを凝視すると、彼はユキちゃんの方を見た。
「ホントの幸せを手に入れるためにはさ…、っていうか、好きな人の幸せを願うんなら、多少の犠牲や我慢はつきものだってことだよ…。それを乗り越えてこそ得られる愛がある…。だよな、幸男…?」
「ああ」
ユキちゃんも恭平さんの方を見てうなずいた。
ふたりの間にはホントに細かい話し合いができているようだ。
「でも…」
どうしてそんなふうに思えるのか、私にはさっぱり理解できない。
再び不服を唱えようとしたとき。
ふいにユキちゃんが私の右隣に腰掛けてきて、私の涙をハンカチで拭いてくれた。
「え…っ」
久しぶりに感じたユキちゃんの指に、思わずドキッとしてしまう。