初恋グラフィティ
「あれ、何か志保今日暗くない?」
ユキちゃんがハンドルを握りながら言った。
「さっきからため息ばっかついてる。何かあった?」
「えっ…」
きのう恭平さんとあんな取引をしたことは、口が裂けても言えないよ…。
ここはちょっとハムスターの話でもしてみようか…。
私は恭平さんを疑いつつ、本当にハムスターの話を切り出してみた。
「あのね、うちのジャンガリアン・ハムスターが、きのう子どもを産んだみたいなんだ…」
「へー。それはよかったじゃん。別にため息つくようなことでもないでしょ?」
「でもほら…、ネズミって一気に増えるって言うでしょ…?それでこれから赤ちゃんのもらい手を探すか、子ども達を分けて飼わなきゃいけないのかなとか考えたら、いろいろ大変だなって思って、そしたら何か気が重くて…」
…しどろもどろだった。