真夜中のサーカス

狂ったような明るい楽器を鳴らした楽隊がやってくる。大変けったいな笛の音を鳴らし、ピエロや猛獣を引き連れて。

彼らは移動するサーカス団。何故か夜にしかショーを行わず、そのサーカスには招待された人間にしか入ることができない。

今宵、招待されるのはあなたの番？



「ゔぇ〜……。喉がガラガラ」

高校一年生の黒鳥律（くろとりりつ）は、目を覚まして声を出した瞬間に喉に手をやる。昨日、友達数人とカラオケで騒ぎ過ぎたせいだ。

「お兄！早く起きなよ！」

部屋のドアを乱暴に開け、中学一年生の妹が入ってくる。そして律が「おはよう」とガラガラの声で言うと、吹き出した。

「何その声！おじいさんみたいでウケる」

「うるせぇ！笑うな！」

とりあえずご飯冷めるから早く来てね、と言い妹は部屋を出て行く。今日は水曜日。普通に学校がある。律はベッドから降り、制服に着替えた。

律がリビングに行くと、妹の作ったおいしそうな朝ご飯が並べられている。先に食べている妹の前に座り、手を合わせて律もご飯を食べ始めた。