真夜中のサーカス
団長はにこやかに話すが、内容は全く笑えないものだ。先ほどまで興奮していた凪も「えっ?」と言いたげな顔をし、律も団長に対して恐怖を抱く。その時、「団長」とピエロの一人が声をかけた。

「少し確認したいことがあるのですが……」

そう言ったピエロの声は若くて高い。少女のものだとわかる。背丈からしてまだ子どもなのだろう。こんな夜中に働くなど、親の許可はあるのだろうか。律はそんなことを考えながらも、聞き覚えのある声だと思った。しかし、誰の声なのか思い出せない。

「少し席を外します」

団長が律と凪にそう言い少女のピエロと共に二人から離れると、「君たち、招待状をもらったの?」とパフォーマンスを先ほどまでしていたピエロたちに取り囲まれた。

「そうですけど……」

「なら、さっさと帰った方がいい」

「こんなところに来ちゃダメだ!」

ピエロたちはどこか焦ったような声で話す。未成年が夜遅くにこんなところに来ていることが悪いという意味なのだろうか。しかし、招待をしたのはサーカス団である。律と凪は顔を見合わせた。
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