真夜中のサーカス
律がそう言うと、凪は首を横に振る。そして、「最悪な共通点あるでしょ?今日であの日から三年だよ」と囁く。

律の全身に寒気が走る。凪も覚えていたのだ。いや、忘れることはできないだろう。

律と凪には、もう一人幼なじみがいた。名前は広瀬哀(ひろせあい)と言い、家も近所で幼稚園から小学校まで一緒だった。

明るく活発な律と凪に対し、哀は内気で大人しく、友達と集まってわいわい騒ぐより、一人で読書をするのが好きな子だった。正反対のタイプなのだが、律と凪はよく遊びに行くのに哀を誘い、哀も二人にクッキーなどのお菓子を焼いてくれた。

仲の良い三人だったのだが、三人が十三歳の頃、それは一変する。

交通事故で哀の両親が亡くなり、一人っ子の哀は家族を失ってしまったのだ。その葬儀の最中、哀は「こんな人生、生きたくない!!」と叫び、そのまま会場を出て行き、行方不明となっている。

「他の人になくて、俺たちにしかない共通点。それって哀が失踪したことだろ?」

「じゃあ、もしかしたらこのサーカスを見に行けば、哀がいるかもしれないってことか?」
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