真夜中のサーカス
その時、ジャグリングをしている一人のピエロがジッとこちらを見た。顔は笑った仮面をしているため、誰なのか、男なのか女なのか、本当の表情は何なのか、一つもわからない。

ピエロたちのパフォーマンスが終わった後は、妖精たちによる空中ブランコや、猛獣による火の輪くぐり、またまたピエロによる玉乗りなど、たくさんのパフォーマンスが目の前で繰り広げられる。

そして途中で休憩となり、団長が律と凪にジュースを差し出す。ジュースは虹色で、SNSにアップしたら注目されそうだなと思いながら律は口をつけた。

「どうでしょうか、我が真夜中のサーカス団のパフォーマンスは」

団長の問いに凪がすぐに「最高です!」と答える。そして、サーカスを見るのが初めてなことなどを興奮しながら話した。すると、団長がニコリと笑う。

「では、サーカスのピエロについて面白いことを教えますね。彼らは笑ったお面をつけておどけていますが、実はこのサーカスに来てから笑っていないんですよ。でもお面は笑っているから、どんなに無表情でもおどけていれば許されるんです」
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