骨の髄まで愛してやるよ【メイン更新中】
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『じゃあ、あんたはどこぞのおんぞーしと結婚するんだ? しょーらいを決められてるってツラくね??』
五歳の頃、一回だけ迷子になったことがある。
そのとき一緒に遊んでくれていた男の子が、「おじょうさまって本当にいるんだなー」と、ドレスを身に纏っていた私に驚いた表情を向けていた姿が今でも忘れられない。
それに、『おんぞーし? なにを言ってるの?』と、不思議に思っていたことを今でも鮮明に覚えている。
その後、迷子の私を発見して近寄ってきてくれた秦さんに腕を引かれ男の子の側を後にした。
「はたさん、ちぎの結婚相手って決まってるの? ちぎ、おんぞーしとけっこんするの? 自分で選べないの??」
パパとママにはなんとなく御曹司のことを聞きづらかったため、なんでも教えてくれる秦さんに聞いてみた。
秦さんは困った顔を浮かべはしたけれど、かといって悩む素振りも見せずに
「ちぎ様の王子様はお父様とお母様が決められますよ。きっと、絵本のような優しい優しい王子様です」
そう、私に言い聞かせた。
――――――『私の王子様』はパパとママが決めるんだ。
私は誰も好きになってはいけないんだと、小さいながらに納得をした。