The tear
「……おはよう」

空が挨拶をしながらドアを開けると、バシャリと何かがかけられ、制服がベタベタに濡れた。

「ああ、悪い。手が滑ったわ」

そう言い、隣のクラスの人間のはずの鈴木が教卓に腰掛け、ニヤニヤと笑っている。その手には空になったコーラの缶が握られていた。コーラをかけられたのだ。

「うわ、ベタベタじゃん!」

「かわいそ〜!」

ニヤニヤしながら鈴木の取り巻きたちが言う。空は泣きたいのをグッと堪え、「何でこんなことするんだよ」と鈴木を睨む。

「はあ?別に理由なんてないけど。ただ面白いからやってるだけだし」

前にいじめてた奴より面白いわ、そう言いながら鈴木はゲラゲラ笑う。それに合わせて取り巻きたちも笑う。

辛くなり、空が助けを求めるように黙っているクラスメートを見ると、クラスメートたちは空がいないかのように目を逸らし、「そういえばさ〜」と話を始める。

予鈴が鳴り、担任が教室に入ってくる。そして「鈴木、お前のクラスはここじゃないだろ」と言い、鈴木は「すんませ〜ん」と笑いながら教室を出て行った。
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