夏の風


暴れるあたしの腕を掴むと 



「あんまり、困らせんなよ?
亜耶ちゃんが言うこと聞かないとせっかく協力してくれた皆の努力が無駄になるだろ?」



皆…って? 


サキ…も?


友達なのに? 


何で? 



丈流くんは? 


丈流くんも知ってるの? 


全部…全部…罠? 


あたし…あたし… 



あたしは抵抗する力もなくなり、目からは涙が零れた 



あたしがおとなしくと、川島先輩は容赦なくあたしに唇を押しつけた 



丈流くんとは違うタバコの匂い 



温かくも気持ち良くもない、荒いキス 


あたしの身体を這う冷たい手 



友達にも丈流くんにも皆ににも裏切られて、こんな男と…



あたしは悔しくて情けなくて歯を食い縛り涙を流した 





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