ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。

「ええっ、ちがっ、シロちゃんじゃないよっ、なんでっ……」

「いーからいーから、行くよ」


いつ握ってもちっさい手。

きっと、目をつむっててもモモの手だってわかるだろう。もう何度握ったか数えきれない。

いまだ「えっ」とか「わっ」とか声にならない声を発してるモモにかまわず、突き進むのは新校舎。


「えっ、こっちは──」

「いーのいーの」


モモがためらうのもわかる。

普通クラスの人間は新校舎に足を踏み入れたらいけない、とかいうルールがあるらしいが、実際は誰かが言い始めた迷信で、そんな規則はない。

まあ、あると言えば。
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