ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。
「慣れれば大丈夫だって! それに、私だって料理できないと困るじゃん。いつかお嫁に行きたいもん。いつまでも伊緒くんがいるわけじゃないんだから、へへへっ」
「……」
伊緒くんはなにか言いたそうにしていたけど、今日は珍しく突っ込んでこなかった。
それからは、カチャカチャとお皿とスプーンのぶつかる音だけが聞こえるだけ。
……これも伊緒くんのためだから。
伊緒くん離れの第一歩だと思うと切なくて、モグモグかみしめるカレーの味なんて、ちっともわからなかった。
お風呂上り、私は洗面台で鏡を見ながらおでこに薬を塗った。
この薬、今ある傷が目立たなくなるんだって。今日、夕飯の買い物をしたときに見つけて一緒に買ってきたの。
前髪を上げると、少しくぼんだ傷跡が見える。
少し、周りの肌の色とも違う。
これがある限り、伊緒くんは私に縛られちゃうんだから。
ごしごし、ごしごしって、刷り込むように私は薬を塗り続けた。