ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。
「へぇ……勝手にすれば?」
ズキンッ。
そんな冷たい言葉が飛んでくるとは思ってなくて、胸の奥がギシギシ音を立てて痛くなる。
「か、勝手にするもん」
売り言葉に買い言葉を返した私に、
「あとはひとりで用意も頑張って」
タオルを放り投げた伊緒くんは、そのまま二階へ上がってしまった。
「……っ」
伊緒くん、本気で怒っちゃったの?
でも、どうして?
「……はあ……」
楽しみだった交流キャンプ前夜に伊緒くんとケンカしちゃうなんて。
伊緒くんとはクラスが違うから関わる時間もないだろうし、しばらく仲直りできないじゃん。
こんなはずじゃなかったのに。
伊緒くん離れするのと、伊緒くんとケンカするのは全然ちがうのに……。
伊緒くんが投げたタオルを拾って顔に当てた。
「もうやだよ……」
私のつぶやきは、タオルの中へ吸い込まれていった。