ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。

「モモは一晩寝たら忘れちゃうの? ニワトリ以下だね」


彫刻のように整った顔から吐き出されたのは、毒のような言葉。

ううっ。
そうなんです。伊緒くんはちょっと毒舌なんです。


「何度起こしたと思ってんの。いい加減起きなきゃキスするよ」


言うや否や、伊緒くんは私の前髪を上げるとおでこにチュッとキスした。


「うわわわっ……!」


起きなきゃ……って。今、起き上がる隙も無かったよね!?

伊緒くんてば、いつも唐突なんだから……。

そして、全開になった私のおでこを見て、ちょっぴり切なそうな顔をした。


───だから。


「起きなきゃキスって、もうしてるじゃん!」


その顔に気づかないふりをして。私は前髪でおでこを隠した。




伊緒くんは4月生まれ。私は3月生まれ。

同じ学年だけど、その差は1年もあって。

伊緒くんが歩きだした頃に、私は生まれた。
< 3 / 298 >

この作品をシェア

pagetop