ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。
「モモは一晩寝たら忘れちゃうの? ニワトリ以下だね」
彫刻のように整った顔から吐き出されたのは、毒のような言葉。
ううっ。
そうなんです。伊緒くんはちょっと毒舌なんです。
「何度起こしたと思ってんの。いい加減起きなきゃキスするよ」
言うや否や、伊緒くんは私の前髪を上げるとおでこにチュッとキスした。
「うわわわっ……!」
起きなきゃ……って。今、起き上がる隙も無かったよね!?
伊緒くんてば、いつも唐突なんだから……。
そして、全開になった私のおでこを見て、ちょっぴり切なそうな顔をした。
───だから。
「起きなきゃキスって、もうしてるじゃん!」
その顔に気づかないふりをして。私は前髪でおでこを隠した。
伊緒くんは4月生まれ。私は3月生まれ。
同じ学年だけど、その差は1年もあって。
伊緒くんが歩きだした頃に、私は生まれた。