ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。
「あたたかな、春の日差しが──」
壇上で、雄弁に語りだす伊緒くん。
ていうか、聞いてないんですけど!
特進クラスだったことにもびっくりなのに、首席挨拶とか。
もう、伊緒くんってば秘密主義なんだから。
「えー」とか「あのー」とか言っていた来賓の人たちとは違って、聞き取りやすくハッキリしゃべる伊緒くん挨拶はいつだって聞きほれちゃう。
巻物みたいな紙を広げているのに、全部暗記しているのか視線を落とすことはない。
まっすぐ前を見て堂々と。
さっきまでは、生徒たちも半分くらいはぼーっとしてたのに、今はみんな前のめり。
しかも、全女子の目がハートになってるじゃない!
ほほを紅潮させてる子もいれば、口をポカンと開けている。