Re:ha:Next step study ~鬼指導教官にもっとやられっぱなし?!



無茶で無駄な励ましを続ける彼に護衛されながら、無事に彼の自宅の最寄り駅で電車を降り、そこからの自宅までの道のりもふたりで楽しくおかしく歩いた。


「真緒、ぴよ〇ん、ようこそ、俺んちへ。」

いつの間にか岡崎邸への来客があたしひとりから2名へ増員された状態で彼の自宅へ到着。
8階建てのマンション。
マンションビルの玄関に入るのに暗唱番号入力の必要なオートロックがある。
彼はそこを手慣れたボタン操作でさっさと解除し、中へ案内してくれる。

そこからエレベーターに乗り、彼の部屋がある6階まで移動する。
マンションのエレベーターだけあって、スペースが狭い。
ぴよ〇ん箱を持ったあたしのすぐ真後ろに彼が立っていて、肌が触れそうで触れない絶妙な距離と、ぴよ〇んの美貌を死守するという任務から、変に緊張してしまう


「ぴよ〇ん、あと少しで到着するから頑張れ!俺はちょっとぐらいぶさいくでも大丈夫だからな。」

彼はあたしにお構いなしのぴよ〇んのみ激励。
ぴよ〇んにヤキモチを焼きそうになるあたし。
コレって、岡崎先生の策略?! と思い始めた時に、鍵がガチャリと開く音がした。


『到着~!!!! 名古屋駅からここまで3日ぐらいかかったぐらい遠く感じましたよ~!!! この下駄箱の上にとりあえずぴよ〇ん、着地させていいですか?』

「あっ、真緒、そこに置く前に、箱の底にひみつのミッションが貼ってあるから、それ見てから置いてくれ。」

『あ~、まだ、何かあるんです?・・・箱の底・・・底・・・』


ボコッ!


「なんか鈍い音がしたぞ。」

『え~まさか・・・あっ、メモ、これですね。えっと・・・』


【今回のまおのひみつのミッション】
1:名古屋駅からぴよ〇んを安全に運ぶ
2:明日の午後までふたりでたっぷりと楽しむ! 
3:ぴよ〇んの潰れた箇所と同じところをまおがキスされる


『なんですか?! このひみつのミッションは!!!!しかも、この字、岡崎先生としてはちょっとぶさいくじゃないですか?』

「ああ、コレ? 真緒の担当症例だった男に書いてもらった。健側(ケガしていない側)の手で。」

『あっ!長谷川さんですよね?確か右腕神経叢損傷の・・・・』

「個人情報保護法があるので、個人の特定ができることは言えませんが、こういうコトを考えるのは誰かご想像にお任せします。まあ、本人には、彼の近況を真緒に話すことは許可を頂いておりますが。」

さっきまでのぴよ〇ん移動中、彼は必死にそれを運ぶ姿が面白くてたまらないみたいな感じだったのに、いきなりの真面目社会人モードに変身。


『利き手交換練習、頑張ってやってるんだ~長谷川さん。』

「ああ、去年、腱移行術で、患側(ケガしている側)のつまみ動作を再建して、今年、事務職への復職にむけて本格的にリハビリを始めたんだ。」


大学3年生の時の実習において自分の症例担当患者さんだった長谷川さんの近況を彼は穏やかな表情であたしに話してくれる。
腕神経叢損傷という重症のケガの患者さんが前向きに歩みを進めていることに安堵しているのが伝わってくる。


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