買われた娘は主人のもの

貧しい娘、エイミ

 ある世界の話。


 年頃である娘エイミは、貧しいが両親と仲良く暮らしている。
 彼女は臆病で世間知らずではあったが、素直で頑張り屋な一人娘を両親は心から愛していた。

 背は少し低めで身体は少し痩せて細いが、肌は程よく白い。
 髪は背中まで伸びて軽く波打ち、顔は幼さを残しつつ女性らしい色香も出始めている、美しいというよりもまだ愛らしい姿の彼女。

 そんな彼女がある日、家の借金のかたに両親のもとから無理やり引き離され、売られることになってしまった。


 街の外れでエイミを無理やり荷馬車に押し込もうとする男。
 両親や彼女は必死に返済できなかった許しを願う。

 その時、

「その娘を売るのか?」

 そう声を掛けたのは、質の良いものを着た、ふわふわと自然に巻かれた黒髪の、長身の男だった。
 歳は三十前後に見える。

「私に売れ。言い値でその娘を買おう、我が主人が所望だ。」

 長身の男はすぐさま、エイミを連れ去ろうとする人買いと交渉を始め、そして成立したらしい。

 おかげで借金を返済することが出来た両親だったが、何も口出しをすることが出来ぬまま、泣く泣く自分たちの娘を送り出す。
 エイミは連れられるまま、その長身の男が乗ってきた馬車でそのまま屋敷へ連れて行かれたのだった。


 買われた先は、街でも偏屈と噂された男性主人の屋敷。

 なかなかの実力者らしいが変わり者らしい。
 日頃から額から顎まである、目の部分だけが開かれた仮面を一日中着け、人当たりも冷たく他人を寄せ付けない。
 何よりも、誰も主人の面を外した姿を見たことがないということだった。
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