買われた娘は主人のもの

昼間のお仕事

「あら、食べなかったの?本当に子犬みたいに丸まって、それも泣いて…。…無理もない、か…」

 戻ってきたコリーンはエイミの様子を見て、本当に気の毒そうにそう言った。

「でも、食べなくちゃダメよ。あなた、夜と早朝は御主人様のお相手をするからいいけど、昼間は手伝ってもらわなくちゃ。あなたのその痩せっぽちな身体じゃ、手伝ってもらっていてもいつ倒れるか…」

 言われ、エイミは泣いてくしゃくしゃになった顔を上げる。

 そう、一晩主人の相手をさせられ初めてのことに疲れて寝て今に至れば、もう日は高く昇っている。

「…すみません…」

 涙を拭き、少し嗄れた声でエイミはそう謝り頭を下げた。

「それは仕方無いわ。でも悪いことは言わない、食べておきなさい子犬ちゃん」

「…ありがとうございます、コリーン様…」


 エイミは少しかがみ、足を横に折って敷物に座ると食事を始めた。

 意外と、口に入れるともう少しだけ食べようとするもの。
 そもそもエイミは食にも不自由する身でここに連れて来られた。その前にも摂ることが出来なかった水と食物を、身体が欲していないはずがない。

 エイミは、冷めてしまった具のあまり無いスープと固くなったパンと乾いたチーズを、敷物に座りトレーを膝において夢中で食べた。

「…あ〜あ。テイル様、チャンスだったのに…ね」

 エイミが食事をするのを見ながら、コリーンは小さな声で少々大げさにそう言った。

「はい…?」

 エイミは彼女が何を言ったのか分からずに首を傾げる。
 彼女は答えず、楽しげにふふっ、と笑った。
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