買われた娘は主人のもの
 朝日が照り始める頃、コリーンが部屋にやってくる。床にいるエイミの姿を見つけるとすぐに声を掛けた。

「…あなたは本当に子犬みたいね、床で眠るなんて。寒くなかった?…どうしたのよ、目が真っ赤じゃない」

 コリーンはしゃがみこみ、おずおずと顔を上げたエイミの頬を撫でながら心配そうに言う。

「…御主人様のご気分を、損ねてしまって、私…」

 エイミの掠れる涙声のその言葉に、彼女は顎に指を当て考え込んでいるようだったが、すぐに思い当たったらしい。

「あぁ、そういうこと。…気にすることないわ」

コリーンはニコリと笑ってそれだけを言うと、うろたえるエイミの頭を軽く撫で、部屋の掃除を始めた。

「今日は動ける?あなたと仕事をするのを楽しみにしていたのよ、子犬ちゃん。私と対等な相手、このお屋敷にはいないし」

「…はいやります、コリーン様…」

 エイミの返事に彼女は嬉しそうにふふっと笑い、小さな声で付け加える。

「昨夜のことは忘れなさい。…あの方が、あれで気にしていないはずがないんだから…」

「…?」

 コリーンはそれ以上は答えず、用意していた昨日のような敷物を置いた。

「これは今日もあなたが使うためだけになるわ…。さて、そろそろお食事よ。今日のお洋服はこれ。もうすぐバラド様がいらっしゃるわ、大人しく、ね」


 朝の支度と着替えが終わると、一通り掃除を終えたコリーンが部屋を出ていき、エイミを見張るためだろう、入れ替わりにバラドがやってくる。

 そして彼は相変わらず物言わぬまま、部屋の隅に立っていた。
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