買われた娘は主人のもの
 罰なのだから良いはずはないし、彼女が『手強い』と言った理由は分からない。
 しかし自分が屋敷で役に立つためには『役目』を全うするしかないとエイミは思った。

「…罰を受けないように頑張って、お役目に馴れます…!」

 エイミは少々意気込んでコリーンに返す。
 それを見た彼女は苦笑し、

「…初々しいのは良いんだけど…エイミに必要なのは、色々な経験とそれによる想像力じゃないかしら」

そう答えたのだった。



「遅いわね…」

 コリーンはエイミとともに雑用と掃除をこなしながら、すれ違う屋敷の他の者たちに何やら声を掛け終えるたびにそう言った。

 彼女は主人の帰りを聞いている様子。
 しかし他の者たちに主人のこと尋ねるたび執事長の名を出していたので、おそらく共に出掛けたのだろう。
 コリーンにしては主人のことを気にするなど珍しいことだった。

「…コリーン様…?あの…」

 エイミはどうしても気になり、彼女に尋ねようとする。

 コリーンは次の片付けの部屋に着くとエイミに打ち明けた。

「あぁごめんなさい。珍しいのよ、御主人様が、いつものご用事が終わる頃なのにすぐに帰ってこないなんて。おまけに誰も他の用事を聞いていないなんて…御主人様の右腕のバラド様は何もおっしゃらないし」

「でも、テイル様がご一緒のはずでは…?他の方々もテイル様のお名前を言っていましたし、それなら大丈夫じゃ…」

 それを聞いたコリーンはクスリと笑う。

「テイル様ねえ…。まあ、もうすぐ帰ってくるでしょ。さ、この部屋で終わり。終わったらあなたはお風呂、私はそのあと食事休憩だから、頑張らなくちゃ」
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