買われた娘は主人のもの
 主人は仮面の奥の目でエイミを見つめたまま、片手はゆっくりと彼女の頬へ。

「っ…」

 エイミは驚いて目を見開いたまま。

 主人の片手にそっとエイミの頬が包まれ、そのままゆっくりと主人の顔が近付く。

「あ…」

 叩かれるのではないとは分かった。
 それでも何をされるのか、彼女にはすぐに思い当たらない。

 しかし、そのまま主人の動きは止まった。

 エイミの頬に手を当てたまま、自らの顔は彼女の顔の至近距離。主人の仮面さえなければ、ほんの少しの吐息でも感じられそうなほどの。

 主人の手は熱く、彼の手の大きさが感じられた。

「…。」

 目を閉じた主人は、そのまま少しの間動きを止めた。

(え…)

 エイミは動けぬままどうしたらいいのかと顔を歪めていた。

ドサッ

 エイミの視界が突然反転する。
 ベッドに押し倒されたのだと分かったのは、縛られた手首の縄を素早く解かれ、身体のタオルに主人が手を掛けたときだった。

(私の…役目…)

 エイミは泣くまいと決心して目を閉じ、主人に身を任せた。



 朝、エイミは目覚めると主人がいないのを確認して、ふと自分の手首を撫でた。

 何とか泣き出さずに済んだ。
 主人の重みを昨晩も、自分の身体全体で感じた。

 しかし、押さえつけられていたはずの手首も無理やり繋がされた身体も、昨晩はそれほど痛みを感じなかった。

(どうしちゃったんだろう…私、慣れちゃったのかな…)

 同時に、あの行為に慣れてしまったかもしれない自分が恥ずかしくなった。

(…これが、私の…役目…)

 エイミはコリーンが来るまでの間、一人泣いた。
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