買われた娘は主人のもの
 エイミが目覚めると主人はもうおらず、代わりに自分のそばには犬のぬいぐるみが置かれていた。

「…ね、リュカ…あなた、その…見たりしていないよね…?」

 エイミは答えるはずのないぬいぐるみにそう尋ねる。

 このぬいぐるみに見られていると、誰かに見られているのと変わらないほどの羞恥心が出てくる気がした。

「…見ないでね…すごく、恥ずかしいから…」

 縄を解かれた手で抱きしめたぬいぐるみは、コリーンにも言えない自分の気持ちを収めてくれる。

 エイミはこれを贈ってくれたテイルに心から感謝した。


「おはようございます、コリーン様…!」

 コリーンが部屋にやってくると、エイミは元気よくそう挨拶をした。

「おはようエイミ。嬉しそうね…!」

「はい…!御主人様からリュカを置く許可を頂けたので…」

 コリーンはそれを聞くと一瞬、顔を強張らせた。

「…。」

「…コリーン様…?」

 エイミは何がなんだか分からず、心配のあまりコリーンを見つめる。

「…ああ、そう!そうよね!テイル様に頂いたものだもの、御主人様の許可を頂かなくちゃ…!」

 コリーンは突然笑いながらそう返す。

「え…」

 困惑の表情のエイミに、コリーンは苦笑しながら言い訳をする。

「…エイミが御主人様に、どんなお願いの仕方をしたのかと想像したのよ」

「え…その、実は…コリーン様の、他の方にしている言い方を真似してしまいました…」

 恥ずかしそうに正直に答えるエイミに、コリーンはまた楽しげに笑う。

「ふふふふっ…!そうなのね…さぞ御主人様もお困りだったでしょうね…!」
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